韓国でドローンを飛ばす前に:飛行承認・空撮申請・禁止区域の実務ガイド

漢江沿いの夜景や海岸線を上空から撮りたい——折りたためる小型ドローンが一般的になり、旅行カバンに入れて渡韓する人も珍しくなくなりました。ただし韓国では、安全とセキュリティ上の理由から、ドローンを飛ばせる場所・高度・時間について規定が設けられており、違反した場合は罰金などが科されることがあります。厄介なのは、これらの手続きが「一度申請すれば終わり」ではなく、機体の申告、飛行の承認、撮影の申請、現地管理者との協議と段階が分かれている点です。このガイドでは、公的な案内で確認できる範囲のルールを、渡航前から飛行当日までの順番に並べ替えて整理します。
まず押さえる三つの軸:場所・高度・時間
韓国のドローン規制は、細かい条文を覚えるよりも「どこで」「どれくらいの高さまで」「いつ」という三つの軸で捉えると全体像がつかみやすくなります。場所については、空港周辺や軍事関連施設など飛行前に承認が必要な区域が定められています。高度については、そうした制限区域の外であっても、150m以上を飛ばす場合には別途承認が必要です。時間については、夜間の飛行が制限されています。
これに加えて、操縦者側の状態に関するルールもあります。飲酒した状態でのドローン操縦は禁止されています。旅先では昼食にお酒が入ることもあるため、撮影を予定している日は飲酒のタイミングそのものを計画に組み込んでおいたほうが安全です。規定に違反した場合には罰金などが科されることがあるとされており、「知らなかった」で済ませられる領域ではないと考えておくべきでしょう。
持ち込む機体は申告が必要か:2kgという線引き
出発前に最初に確認したいのが、自分の機体の最大離陸重量です。最大離陸重量が2kgを超えるドローンは、非事業用・趣味用を問わず「ドローンワンストップ行政サービス」を通じて機体を申告する必要があります。仕事の撮影ではなく個人の思い出づくりであっても、この線引きは変わりません。バッテリーやプロペラガードを含めた実際の離陸重量で判断されるため、カタログ上の本体重量だけを見て判断しないよう注意が必要です。
申告を済ませると申告番号が発行されます。この番号は、機体の表面に貼り付けるなど、外から確認できるように表示しなければなりません。つまり手続きはオンライン上で完結せず、出発前にシールやラベルを用意して機体に貼っておく作業まで含まれる、と考えておくと当日慌てずに済みます。なお、2kg以下の小型機について資格証の要否など重量区分ごとの細則までは、旅行者向けの一般案内では踏み込まれていません。
事前承認が必要な区域と、150mという高さの壁
飛行前に承認を受ける必要がある代表的な区域として挙げられているのは、空港周辺の管制圏(半径9.3km)、ソウル都心の一部、南北軍事境界線および軍事施設周辺、原子力発電所や原子力研究院などです。半径9.3kmという範囲は感覚以上に広く、空港に近い海沿いの街や郊外の景勝地が管制圏に入ってしまうことも考えられます。また、ソウル都心の一部が対象に含まれる点は、市内観光のついでに飛ばそうと考えている人ほど見落としやすいところです。
これらの区域の外であっても、高度150m以上で飛ばす場合には別途承認が必要になります。山の上から発進させる場合など、地形によっては意図せず高い位置を飛ばしてしまうこともあるため、高度設定は機体側であらかじめ制限しておくと安心です。飛行可能区域や承認の要否は、国土交通部が運営する「ドローンワンストップ行政サービス」で確認・申請できますが、案内されている対応言語は韓国語のみです。韓国語に不安がある場合は、翻訳ツールを使える環境と時間的な余裕を渡航前に確保しておくとよいでしょう。
飛行承認と航空撮影申請は別物
旅行者がもっとも誤解しやすいのが、この部分です。飛行承認を受けたとしても、撮影を自由にできるわけではありません。ドローンで写真や動画を撮影する場合は、同じ「ドローンワンストップ行政サービス」で航空撮影の申請を別途行う必要があります。そもそも空撮が目的で持ち込む人が大半でしょうから、実質的には「飛ばす手続き」と「撮る手続き」を二つセットで考えておく必要がある、と理解しておくのが実務的です。
さらにもう一段あります。飛行・撮影に関する手続きを済ませていても、自治体が管理する国家遺産、公園、海水浴場、国家重要施設、私有地などで飛行・撮影を行う場合は、各場所の管理機関または所有者と事前に協議する必要があります。旅行者が撮りたくなる被写体——歴史的な建造物、海水浴場、整備された公園——の多くがこの区分に当てはまります。行政手続きが通っていても、現地の管理者の同意がなければ飛ばせない場所がある、という前提で行き先を選ぶのが現実的です。
夜間・目視外・飲酒:当日に効いてくる制限
当日の行動を左右するのが時間帯と目視の条件です。日没後から日の出前までの夜間飛行や、操縦者がドローンを直接目視できない範囲での飛行は制限されています。必要な場合は「ドローンワンストップ行政サービス」を通じて特別飛行承認を受ける必要があります。夜景の空撮やビル越しの長距離飛行といった絵になりやすい構図ほど、この制限に触れやすいという点は意識しておきたいところです。
撮影計画を立てる段階で、日の出・日没の時刻を調べてスケジュールに落とし込んでおくと、現場での判断ミスを減らせます。あわせて、飲酒した状態での操縦が禁止されている点も当日のルールとして再確認しておきましょう。
承認なしで飛ばせるドローン公園と、出発前チェックリスト
手続きのハードルが高いと感じる場合の現実的な代替案が、事前承認なしで自由にドローンを飛ばせる場所として案内されているドローン公園です。ソウルでは、ソウル特別市江東区千戸洞にあるクァンナル漢江沿いドローン公園が挙げられています。地方では、大田広域市大徳区文坪洞のクムガン沿いドローン公園や、光州北区龍山にある江沿いドローン公園が同様に紹介されています。いずれも川沿いという立地で、開けた空間で飛行に慣れるには向いた環境といえます。ただし、ここに挙げた以外の公園が同じ扱いになるわけではなく、開放時間や設備は場所ごとに異なるため、訪問前に最新の案内を確認してください。
最後に、渡航前と当日の確認項目を順番に整理します。出発前は、①機体の最大離陸重量が2kgを超えるかを確認する、②超える場合は機体を申告し、発行された申告番号を外から見える形で機体に表示する、③飛行予定地が承認の必要な区域か、高度150mを超えないかを確認する、④撮影するなら航空撮影の申請を別途行う、⑤遺産・公園・海水浴場・私有地などでは管理機関や所有者と事前協議する、という流れです。当日は、日の出から日没までの時間帯か、機体を目視できる範囲にとどまっているか、飲酒していないかを離陸前に確認します。規定に違反すれば罰金などが科されることがある以上、確認に使う時間は保険だと考えてよいはずです。なお、韓国の住民登録番号を持たない旅行者がこのオンラインサービスをどう利用するかについては、一般向けの案内では具体的に示されていません。手続きが必要になりそうな行程なら、時間に余裕を持って準備を始めることをおすすめします。
Korea Tourism Organization ja